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両性具有の双花による一人の男の品定め

両性具有の双花による一人の男の品定め

〈STORY〉

何しろ私達は完全であったので殊更交(まぐ)わりの森へ分け入る必要もなかったのだが
月の者が頻りに誘うので仕方なく足を運んだ次第なのである

聞けば交わりの森で偶然見つけた一人の男の肉体に月の者は恋をしたらしい
何とも月の者らしい軽薄さではある
彼は男の心ではなく男の肉を愛したのだ
肉こそが彼にとって至上のものなのである

さて、件(くだん)の男であるが一目みて虫酸が走った
それが何故なのかは分からない
だがこの男の肉体と自らの肉体を見比べてみた時に心に罅(ひび)が走った事は確かだ

「聖王よ、あなたもこの男に抱いてもらえばよろしいのに」
「冗談を、何故私が男に抱かれなければならないのだ」
「何というか、貴方は随分と無理をしておられる」
「これが私の常態だ」
「うふふ、初いな、聖王よ。
まあ貴方がそうであるからこそこうして私が貴方の代わりに足を開いて差し上げているのですが」
「お前の淫蕩さが私の所為であったとは恐れ入る」
「これ以上の論議は不要」
「何故」

「ですから、男とは考察するもではなく感じるものだからですよ」

俄かには受け入れがたい
私は男に支配されたいのではなく支配したいのであるから

男を支配するのは簡単なのですよ
男は可愛いですからね
貴方は男に対して男の力で対抗しようとするから無理があると言って差し上げているのです

男が怒りをみせたら微笑を浮かべなさい
男の身勝手さには非難ではなく受容を
男が疲労していたら労いの言葉と温かな食事を
男が貴方の腹の上で涙した時、その時こそが貴方が真の意味で男を支配した時なのですよ、聖王
女はこうはいきませんからね
女は何というか、鏡に映った心を虚像と知らずにそれこそが己の心であると思い込むような激しさと愚かしさを持ち合わせていますからね

さあ、聖王、足をお開きなさい
簡単な事なのですよ
世界を変えましょう
紅い剣で貴女の男の心を刺し貫いてもらいなさい

ああ、わたしの内臓が花になる

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