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2014 ハロウィンイラストinお伽噺
昔々ある所に、自分の気持ちを素直にいえない子どもがおりました。
大好物を口にすれば、まずい、といい、お天気がよければ、雨が降ればいいのに、といった具合で、周りにいる大人達も大層困り果てておりました。
ある日、余りに見兼ねたある一人の大人が、『太陽の神・リアン』に、「あの子を素直な子どもにしてください」と、お願いごとをしました。
『太陽の神・リアン』は「わかりました」と、大層快く引き受けてくれたので、その大人はとても安心して眠りにつくことができたそうです。
ちなみにその大人は、どこか狼に似た風貌をしていたそうです。
さて、実は『太陽の神・リアン』は、その子に輪をかけて「ひねくれた神様」でした。
そんな神様が素直にお願いごとをきいてくれるわけもありません。
「ケケケ、あの小生意気な子どもを猫に変えてしまおう、素直じゃないから、こうなるのさ、ケケケ」
案の定、その子は猫に変えられてしまいました。
猫に変えられてしまった子どもはさあ大変!
その日からその子は、「ニャーニャー」としか鳴けなくなってしまったのです。
まずいといってもニャー、雨が降ればいいのに、といってもニャー。
ニャーニャー尽くしの毎日です。
さすがの子どもも、途方に暮れてしまいました。
(一体、どうすればいいんだろう……)
その時です。
「まあ、とっても可愛い仔猫。何かお困りのご様子、わたしがあなたの願いを叶えて差し上げましょう」
目の前に、とっても可愛い女の子が立っていました。
仔猫は自分と毛色が似たその子に、親近感を覚えました。
「ニャーニャー! ニャー!」
仔猫は(元に戻せ! 元に戻せ!)と元気よく訴えたつもりだったのですが、なんとその女の子は、猫語がわからなかったのです。
話しかけてきてくれたので、つい、猫語を理解してくれるとばかり思っていたのですが、がっかりです。
「何を仰っているのかわかりません。でも、こういうことでしょ」
女の子は「えいっ!」といって、手を一翳ししました。
するとどうでしょう。
ムクムクムク……。
(あれ、何か尻尾がムズムズするぞ)
なんと、尻尾が曲がりくねって、変な形になってしまったのです。
「ほら、やっぱり。わたしもあなたのことが大好きよ!」
その女の子は仔猫をぎゅっと抱き締めて、離さなくなってしまいました。
「ニャー! ニャギャー!」
仔猫は、(離せ! 離せ!)と訴えましたが、猫語がわからない女の子に、今更、言葉が通じるはずもありません。
それを陰からこっそり覗いていた『太陽の神・リアン』は、「ちっ」と、神様とはとても思えないような態度で、舌打ちをついていました。
(あーあ、あいつらは何が楽しくてあんなに騒いでいるんだろう。俺にはまったくわからない)
女の子と仔猫は、喧嘩をしながらもなんだかとっても楽しそう。
『太陽の神・リアン』は「楽しい」という感情がわからないのです。
「楽しい」だけじゃありません。
「悲しい」も「寂しい」も「愛しい」も、わからないのです。
『太陽の神・リアン』は、なんだかとってもつまらなくなってきてしまって、自分が祀られている神殿に帰っていきました。
そこは大理石のとってもひんやりとした神殿、温もりなんて一つもありません。
だけど『太陽の神・リアン』は、
(やっぱりここが一番落ち着くや。冷たいほうが、いろんなものが、そのままの形で見えるから)
そうして、すやすやとあっという間に、眠りについてしまいました。
けれど『太陽の神・リアン』の片方の瞳からは、サファイアのような宝石が零れ落ちていました。
それは、人が「涙」と呼ぶものでしたが、『太陽の神・リアン』には、それすらもわからなかったのです。
仔猫が人間の姿に戻ったのは、その次の日の朝のこと。
『太陽の神・リアン』が、二人の前に姿を現すことは、二度とありませんでした。